事業所前の道路が生活道路なのですが・・・

先日、ニュースで2026年9月に生活道路の制限速度が時速60キロから、時速30キロに変更予定であることを知りました。記事には中央線のない道路が生活道路と見なされ、速度規制の対象となるとの内容で、とくに速度規制の標識も設けないとのことでした。実は弊社の立地が生活道路の中ですので、少し心配なのですが、従業員にどのような周知をすれば良いのでしょうか?

■道路交通法改正の経緯

 一般道路での車の法定速度は現在、道路交通法施行令11条により、「法22条第1項の政令で定める最高速度(中略)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(中略)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては30キロメートル毎時とする」とされています。

 

 そのため、標識や表示等がないような一般の道路は、例えば住宅地や、建物が密集するような商業地で、道幅が狭いような状況であっても、自動車は時速60キロでの走行が可能になっています。

 

 しかし、これでは歩行者等の安全確保の面から不十分であるとの議論があり、以前から、危険と考えられる箇所では最高速度を低くして標識や表示をしたり、いわゆるゾーン30の規制がかけられたりなどの対策が取られてきました。

 

 ただ、標識や標示をくまなく設置するには財政面の限界もあるため、政府はさらに、いわゆる生活道路での法定速度を現在の時速60キロから、時速30キロまで引き下げることを盛り込んだ道路交通法施行令の改正を閣議決定したのです。

 

 政令では、法律により与えられた権限の範囲内で政府が裁量によって改正等を行うことができ、改正された同道路交通法施行令の施行は2026年9月1日からとされています。

■具体的な改正の内容

 今回の改正の内容は、いわゆる生活道路における制限速度が時速30キロになるというものです。

 

 ここで対象となる生活道路は、概ねセンターラインや中央分離帯がないものであるとか、道幅が5.5メートル未満であるといわれることがありますが、今回改正された政令に直接そのように具体的な条件が規定されているわけではありません。

 

 上記のように、今までは、自動車に関して道路交通法施行令11条の適用がある道路(時速60キロ制限の道路)は、広く「高速自動車国道の本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路」とされていました。

 

 今回の改正では、道路を「一般道路」としてさらに区分しています。

 

 まず同令同条第一号「次に掲げる一般道路」として以下の4つを規定しました。「イ・高速自動車国道のうち、本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外のもの」、「ロ・自動車専用道路」、「ハ・道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている一般道路」、「ニ・道路の構造上または柵その他の内閣府令で定める工作物により自動車の通行が往復の方向別に分離されている道路」です。

 

 そしてこれらの道路における最高速度は、時速60キロと規定しました。その上で、同条第二号において、「前号に掲げる一般道路以外の一般道路」の最高速度を、時速30キロとしたのです。

 

 そのため、上記イからニに該当しない一般道路は、全て時速30キロ制限がかかるということになります。

■早めに従業員に対する対応を取りましょう

 一般道路の速度制限に関する今回の政令の改正内容は以上のようなものであり、事業所としては、従業員に対して指導しておくことが必要です。

 

 ただ、規定の内容からすると、具体的な場合に、今走行している道路がどれに該当し、制限速度がどうなるのか即時に判断することが難しい場合もあるかもしれません。

 

 そのため、目安として中央分離帯や車両通行帯がない狭い道路は時速30キロ以下で走るべきと考えておくことも間違いではないと思います。

 

 ただ、安全教育という面では、事業所としてはさらにすすんで、従業員に対して、高速道路や自動車専用道路、標識等で制限速度が分かる道路以外は、全て時速30キロ以下で走行するように指導した方が良いと思われます。

 

 本件の改正は、歩行者や自転車が車と接触して生じる事故、特に死亡事故を防止することが主眼とされており、原則が時速30キロ以下で、それより高速度を出せるのは例外的な場合と考えた方が、より安全が図られます。

 

 ひいては事故の発生の減少や、被害の低減など、事業所にかかる責任等も軽減される結果が期待できるといえます。

 

 以上の改正は、2026年9月から施行されますが、それまでの間に、再度安全な運転速度について従業員に指導しておくべきであり、また事業所の周りなど、よく使うルートの道路状況を確認しておくべきでしょう。

執筆 清水伸賢弁護士

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