最近、街で電動キックボードを利用している人をよく見るようになりました。車なら一方通行のはずの道を逆走したり、歩道でも平気で走行したりする人もいます。電動キックボードで走行する際の交通ルールはどのようなものになっているのでしょうか?
キックボードの一般的な規定は2022年2月に取り上げましたが、その後、キックボードの規定改正については、2022年4月に改正道路交通法が公布され、2023年7月1日から施行されました。同改正では、電動キックボードの規制が大幅に変更されています。
改正前の電動キックボードは、道路交通法上の原動機付自転車に該当し、免許が必要で、歩道は通行できず、ヘルメットの着用義務があるなど、原動機付自転車に対する規制が適用されていました。
しかし同改正では、電動キックボードなど原動機付自転車とされていたもののうち、一般原動機付自転車と、一定の規格を備えたものを特定小型原動機付自転車とに分け(法2条10号)、さらに特定小型原動機付自転車のうちの一部を特例特定小型原動機付自転車として分類しました。
特定小型原動機付自転車とは、「車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として内閣府令で定める基準に該当するもの」をいいます(法2条10号ロ)。
道路交通法施行規則で定める基準は、以下の通りです。
これらの基準を満たさない電動キックボードは、一般原動機付自転車や自動車とされ、それに対する規制が適用されます。
特定小型原動機付自転車でも、自賠責保険への加入が義務付けられていますし、ナンバープレートも取り付ける必要があります。ヘルメットの着用は努力義務とされ、免許も不要ですが、16歳未満の者が特定小型原動機付自転車を運転することは禁止されています。
特定小型原動機付自転車は、原則として車道を走行しなければなりませんが、自転車道も通行することができます。道路では左側端に寄って通行しなければならず、右側を通行してはいけません。信号や交差点で右折する場合には、二段階右折をする必要があります。
そして特定小型原動機付自転車は、歩道を通行することはできません。
特例特定小型原動機付自転車とは、特定小型原動機付自転車のうち、以下の条件を満たすもので、他の車両を牽引していないもの(遠隔操作により通行させることができるものを除く。)をいうとされています(法17条の2)。
そして、このような条件を満たした特例特定小型原動機付自転車については、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯も通行することができます(法17条の3)。
歩道についても、「道路標識等により特例特定小型原動機付自転車が歩道を通行することができることとされているときは、当該歩道を通行することができる」とされています(法17条の2)。
特例特定小型原動機付自転車が歩道を通行する場合、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならないこととなっており、歩行者優先で走行しなければなりませんが、普通自転車通行指定部分があれば、歩道の常用に応じた安全な速度と方法で進行することができるとされています(法17条の2第2項)。
以上のように、電動キックボードが特定小型原動機付自転車である場合には、原則車道を走行すべきですが、自転車道も通行できることから、一方通行でも「自転車を除く」とされる場合には逆走も可能と解されます。
例えば一方通行の出口側の進入禁止の標識に「自動車・原付」とされている場合、ここにいう「原付」は一般原動機付自転車であるため、特定小型原動機付自転車は進入することができます。
ただし、特定小型原動機付自転車は歩道を走行することはできません。
特例特定小型原動機付自転車についても、一方通行については特定小型原動機付自転車と同様であり、また特定小型原動機付自転車とは違い、歩道等を走行することが可能とされています。
なお、電動キックボードの中には、特定小型原動機付自転車として普段は時速20kmまでの速度が出せるが、スイッチを切り替えることにより時速6kmまでしか出せないようになり、特例特定小型原動機付自転車の条件を満たすようなものもあります。
しかし、このような電動キックボードの場合、スイッチを切り替えないまま歩道を走行することはできません。
スイッチを切り替えないままで、特例特定小型原動機付自転車の条件を満たさない場合には、例え時速6km以下で走行していたとしても、歩道を走行することはできないので、この点には注意する必要があります。
執筆 清水伸賢弁護士
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