乗合バスの運転者が低血糖により運転中に意識混濁となった事故など、健康問題に起因する職業ドライバー事故が目立つことが、国土交通省の事故分析資料(自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書─平成21年度)で指摘されています。
こうした実態を踏まえて、同省では、医学的知見のある学識経験者、産業医等を委員とした「健康管理マニュアル策定ワーキンググループ」を立ち上げて検討し、自動車運送事業者へのヒアリングを踏まえ、運転者の健康状態を良好に維持するための「事業用自動車の運転者の健康管理に係るマニュアル」を策定しました。
このマニュアルは、運送事業者が、健康診断等により「運転者の健康状態の把握」を行った上で、乗務前点呼等で運転者の乗務に関して「乗務前の判断・対処」を行い、さらに運転者が乗務を開始した後の「乗務中の注意・対処」のための手順を示したものです。
点呼時における管理者の注意事項も以下のように具体的に示しています。
① 運転者の立ち位置を足型等で明示し至近距離で点呼する。
② 必ず運転者の顔を見ながら行い、運転者に声を出させる。
※ 健康状態が悪いと声に兆候が現れやすいため必ず運転者に声を出させる
このほか、個別指導のための健康管理ノート作成方法などにも触れています。
また、運転者の健康管理の手順の詳細を示した「本編」以外に、要点を簡潔にまとめることにより手元で利用しやすくした「運行管理者の手元利用版」及び「運転者の手元利用版」が作成されています。
運転者の手元利用版では、持病がある運転者が医師に相談する際のポイントとして、職業ドライバーであることや、運行スケジュール、点呼で体調確認が行われる点を伝えて助言を受けることや、医師に相談した結果については、運転者の健康管理について責任がある運行管理者に伝えることなどを強調しています。
医師が職業ドライバーとは知らずに運転上悪影響を及ぼす薬を処方してしまったり、深夜勤務とは知らずに通常の生活リズムを想定して血圧や体調管理等を指導している場合があり、それが事故に結びつく危険も多いからです。
「健康管理マニュアル」の詳しい内容については、国土交通省のホームページ掲載の「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書(第2分冊)」を参照してください。
【参考】
全日本トラック協会では、国土交通省の働きかけを受け、独自にドライバー向け健康管理用リーフレットと運行管理者向けのマニュアルを作成し、公表しています。
詳しくは、同協会のWEBサイトを参照してください。
(2010年7月20日更新)
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